先日、ある大学のゼミで講義をしてきました。
内容は、社会人・人事目線での仕事選びや就活についてです。
その中で出会った1人の学生を通して、「誰かのため」「社会のため」になる仕事をすることの重要性を改めて感じました。
今回は、そんなお話をしたいと思います。
「誰かのため」の仕事を目指す学生との出会い
ゼミの講義では、自己分析のワークを行いました。
学生には過去を振り返ってもらい、頑張ったことやその行動の理由などを紙に書き出して自分を分析してもらいました。
慣れないことを考えて頭を抱える人、ダルさが態度に出ているような人が多い中、スラスラとペンを走らせる1人の男子学生が。
シートを覗き込んでみると、「恥ずかしいからあんまり見せたくない」と照れながらも内容を教えてくれました。
「自分は消防士になりたい。
理由は、火事の現場やニュースを見て、災害も多くて、ピンチに陥っている人の力になりたいと思った。
部活をやってきて体力には自信のある自分が、社会の役に立てる場所はここだと思った。
だから体力作りと勉強を頑張ってます。」
はっきりとした言葉で話をしていて、本心で思っているということが伝わってきました。
「誰かのために」「社会に役立つために」が言える、気持ちの良い学生でした。
素敵だなと思うと同時に、ふと感じることがあります。
「今、そういう熱意を秘めた人はどれくらいいるんだろう?」
「個人尊重時代」は社会への要求が高い
近年は「個人の生活を尊重する」流れがあります。
世間全体が会社のために粉骨砕身働き続ける古い働き方よりも、自分らしく生きることに重きを置いています。
自分の人生を充実させたいのは当然ですので、この流れ自体は良い傾向です。
ただ、自分の人生は常に社会の中にあり、社会と繋がりながら充実させていく必要があります。
自分の時間を大事にしたい。
だから組織に尽くす必要はない。
何となく仕事して、趣味に時間を使いたい。
むしろ就職したくないし楽な仕事をしたい。
少し厳しかったら別に辞めてもいい。
自分が儲かれば他人に迷惑をかけてもいい。
ストレス発散できるなら他人を攻撃したい。
そういった個人を尊重するあまり、社会が、組織が、仕事が悪という考え方が根付いてきている感覚はないでしょうか。
言い換えると、社会への要求が過度になりつつあると感じます。
その反動で、果たすべき仕事という義務への意識が薄れている気もします。
※個人を尊重しない社会を肯定しているわけではないです。
当然、法律を度外視したブラック企業やハラスメントは淘汰されるべきです。
個人の生活が満足するのは周りの仕事のおかげ
個人の生活を満足させるためには、人それぞれ色んな方法があるでしょう。
そこには誰かの仕事が絶対に関わっています。
好きなアーティストのライブに行くのも
(ライブ運営、芸能事務所、歌手など)
美味しいご飯を食べるのも
(シェフ、食材や調味料の生産者など)
旅行を計画し実行するのも
(旅行会社、ホテル、飛行機や鉄道など)
大切な家族を守る環境も
(建築、家具家電、インフラ、保険など)
安心・安全な生活を送るのも
(警察、消防、公務員など)
個人の生活を満足させるため、裏で試行錯誤しながら働いている人たちが必ずいるはずです。
自分の生活が充実するのは、誰かの仕事のおかげです。
自分は仕事から恩恵を受けているのに、社会へ要求が強く義務が薄い時代に近づくとしたら危機感を覚えます。
(まあそれだけ余裕がない社会なのかもしれません。国全体で危機感を持った方が…笑)
自分の仕事は誰のためになる?
では、自分は仕事で誰の生活を充実させられるでしょうか?
誰に貢献できるでしょうか?
エンドユーザーに直接でなくても構いません。
自分の仕事が誰のためになるのか。
社会とどう繋がっているか。
個人の生活を大事にしつつ、自分が働く所定労働時間くらいは「誰のための仕事か」を真剣に考えても良いと思います。
「誰かのために」が仕事になるのは、サラリーマンもフリーランスもYouTuberもきっと一緒なはずです。
誰かのために仕事ができる人を尊重したい
これから、社会を取り巻く仕事というものが大きく変わってくるでしょう。
AIの発展、法律の整備、国の施策…。
色んな要素があります。もちろん不安要素も。
でも、基本的に仕事は「誰かのため」にあるものということは変わりません。
その仕事がないと、社会は成立しません。
「個人尊重時代」の今だから感じること。
個人だけでなく、「誰かのため」の仕事で社会を支えている人を尊重することです。
誰かのための仕事を考えられる人は、とても貴重な存在です。
考え方は世代によって違いますが、みなさんは仕事についてどう思うでしょうか。
私は、今回ゼミで出会った学生の話を聞いて、改めて仕事というものを考えさせられました。
冒頭に話した彼が立派な消防士になって、困った人を救えるようになることを願っています。